先日観に行った「ソロモンの偽証」。
今日から公開になったので、初日に早速観に行ってきた。

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 「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
監督:成島出
出演:藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生
原作:宮部みゆき

『バブル経済が終焉を迎えつつあった1990年12月25日のクリスマスの朝、城東第三中学校の
校庭で2年A組の男子生徒・柏木卓也が屋上から転落死した遺体となって発見される。
警察は自殺と断定するが、さまざまな疑惑や推測が飛び交い、やがて札付きの不良生徒
として知られる大出俊次を名指しした殺人の告発状が届き、事態は混沌としていく。
遺体の第一発見者で2年A組のクラス委員を務めていた藤野涼子は、
柏木の小学校時代の友人という他校生・神原和彦らの協力を得て、
自分たちの手で真実をつかもうと学校内裁判の開廷を決意する。』


相変わらず演技が素晴らしくて、良いシーンが何ヶ所もあった。
思わず涙してしまう場面もあったんだけど、全体を通してみると思っていたほどの感動はない。

個人的に最大の突っ込みどころは、柏木君があまりにもクソヤローすぎること。
柏木卓也の死をきっかけに始まる物語なんだけど、彼のことがほとんど描かれていない。
そのせいで、この映画に登場する生前のシーンだけを見るとあまりにも最低な奴にしか映らない。

本当は色んな事情があったんだろうけど、クソ面倒くさい人間としか思えない。
神原君は何一つ悪くないし、あれだけの暴言を吐かれて、
むしろよくそこまで耐えて柏木君に付き合ったと褒めたくなる。
本当に「勝手に死ね!」と言いたくなる。その気持ちは充分に分かるよ。

そしてラストにかけて真実が明かれた後、
全ての事実を知っている人間が全てを告白した後、
その真実と向き合っている皆の姿をちゃんと描いてほしかったね。

確かにこの裁判は真実を明かし、大出君の有罪・無罪を決する裁判。
だけど、真実がさらけ出された後、その事を受けて
彼らの胸にはどんな思いがあり、何を感じて、どう向き合っていくのか。

今までちゃんと深く人物の心情を描いていたのに、その事に対しては何も描かれていない。

そして、藤野涼子の父が裁判の終わった後に「皆でビールで一杯やりたいな!」という
色んなものを台無しにしてしまう台詞はいらなかったな。

裁判後の皆の姿がやたら明るく描かれているのが本当に不思議。
明かされた事実に対してちゃんと向き合ってくれよ、と思う。


俺の好きなシーンは松子ちゃんのお父さんが裁判開廷の前に、
冗談気分で来て、騒いでいる傍聴人達を一喝して制するところ。

「この子ら、必死で見つけようとしてるんだよ!」

と。あれはカッコイイね。


あと、元校長先生が証人として証言しているシーン。

彼は自分の非を認め、間違った判断をしたと認め、辞職という道を選んだ。
それを藤野涼子も責めはするけども、他の先生達とは違っていつも生徒の目線でいて、
生徒のことを考えてくれていた、と言って感謝の言葉を述べる。

それを受けて生徒たちが次々に立ってお辞儀をする。
このシーンも好きだね。


良いシーンがたくさんあったし、顔のアップの場面が多くて、
表情だけで色んな気持ちを表現している演出の方法もすごい良かった。

不満は柏木君があまりにもクソヤローにしか映っていないってことと、
裁判後があまりにもあっさりしすぎていること。

うーん、題材が面白かったのにそのあたりはもったいなかったな。